貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合には、特段の事情のない限り、信義則上これを開示すべき義務を負い、この義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは不法行為を構成し、損害賠償が認められた事例 最高等裁判所判所第3小法廷 濱田邦夫、上田豊三、藤田宙靖、堀籠幸男 2005年(平成17年)7月19日 平成16年(受)第965号 過払金等請求上告受理申立事件 (株)キャスコ 井上元弁護士 06(6366)0636 貸金業者の取引履歴開示義務については、開示義務を認め、不開示は違法であるとして損害賠償を命じる裁判例が主流となってはいたものの、開示義務を否定する裁判例も相当数存し、高等裁判 […]
イーシステム・ジャパンの行っていたモニター商法に関し、商品の購入代金を融資した貸金業者からの貸金請求について、個品割賦あっせんに該当するとして抗弁権の接続を認め、抗弁権の接続を主張することが許されない特段の事情もないとして、契約不存在の抗弁によって請求を棄却した事例(確定) 福岡地方裁判所 秋信治也 2004年(平成16年)8月27日 平成14年(ワ)第3886号 貸金請求事件 (株)サニー 吉原洋弁護士 092(771)7431 本件はイーシステムのモニター商法に関する判決である。イーシステムは、モニター業務希望者と業務委託契約を締結する際、同人らに業務に用いる商品を預託したが、持ち逃げ防止 […]
敷引特約が消費者契約法10条に違反するとして、その一部を無効と判断する判決を言い渡した事例 大阪地方裁判所 横山光雄 2005年(平成17年)4月20日 平成16年(ワ)第10347号 敷金返還請求事件 公表せず 増田尚弁護士 06(6633)7621 1 事案の概要 賃借人は、2003(平成15)年6月、大阪市浪速区に所在するマンションの1室につき、家賃月7万円(共益費月1万円)、賃借期間2年との内容で賃借し、夫婦2名で、約11カ月間居住していました。 この賃貸借契約には、保証金(敷金)として50万円を差し入れることになっていましたが、解約時には、いわゆる敷引として40万円を控除して、残余の […]
書類取付けによる不動産奪取を図ったSFCG子会社が、権利証がなかったために所有権移転登記が実現できなかった不動産物件につき処分禁止の仮処分をかけていたところ、物件所有者相続人の異議申立が認められ、取消されたので保全抗告を申し立てた事件であるが、東京高等裁判所でも、書類等につき偽造だということを含めた更に詳しい事実認定をして、抗告申立を棄却した事例 東京高等裁判所 大喜多啓光、園部秀穂、河野清孝 2005年(平成17年)4月8日 平成16年(ラ)第1684号 不動産仮処分命令取消決定に対する保全抗告事件 (株)ティー・アンド・エー 茆原正道弁護士 044(855)5414 1 事件の概要 本件は […]
武富士の時効にかかった債権の請求に基づいて、債務者が一部分割で支払っていた件について、債権の時効消滅を認めた事例 大阪簡易裁判所 安井 毅 2005年(平成17年)3月25日 平成16年(ハ)第11539号 貸金請求事件 (株)武富士 山田治彦弁護士 06(6362)8177 本件は、平成7年12月を最後に放置された債権について、武富士から「一括返済が、できなければ給与の差押をする。差押されたくなかったら分割で支払え」と言われた債務者が平成15年2月18日から分割払いをした事案である。 裁判所は、専門的知識を含め圧倒的に優位の立場にある貸金業者である債権者においては、消滅時効の完成の事実を告知 […]
中学教材の多量販売・マンスリークリア方式について抗弁対抗を認めた事例 神戸地方裁判所姫路支部 2005年(平成17年)3月15日 第1事件・平成15年(ワ)第758号、第2事件・平成16年(ワ)第311号 立替払金請求 第1事件・オリエントコーポレーション・第2事件・(株)第一出版 山﨑省吾弁護士 0792(84)9100 教材の多量販売についての地方裁判所判例である。 本件は、「学習内容の指導を電話で行うので塾や家庭教師よりも費用が安くなる」などと称して、小学生の親に、中学3年分の教材を108万円で、クレジット販売した事案である。 第1事件は、信販会社からの立替払金請求に対して、消費者からの […]
取引経過開示のため、文書提出命令が出された事例 鳥取簡易裁判所 佐藤洋一 2004年(平成16年)8月27日 平成16年(特ノ)第384号 特定調停事件 アイフル(株) 岸田和久弁護士 0857(29)6990 決 定 申立人 A 申立人代理人弁護士 岸田 和久 同 大田原俊輔 相手方 アイフル(株) 上記当事者間の平成16年(特ノ)第384号特定調停事件について、職権により次のとおり決定する。 主 文 相手方は、調停手続の適正な処理のため、平成16年9月13日までに、申立人A(生年月日、昭和○○年○月○○日生)に関する下記の各書類を提出すること。 記 1 申立人に対する商業帳簿〔当初からの貸 […]
悪性の右乳癌を発症した原告に「どんなに大きい腫瘍でも完全に治せる」と断言し、治療費を騙し取り、適正な治療の機会を奪った被告に対し、不法行為の成立を認め約1220万円の損害賠償金の支払を命じた事例 仙台地方裁判所 畑中芳子、中丸隆、佐藤隆幸 2005年(平成17年)6月27日 平成16年(ワ)第579号 損害賠償求事件 気光治療院こと秋元繁 小野寺友宏弁護士 022(266)4664 被告は、医師免許がないにも関わらず「癌治療の気光治療院」と称して「短期間での癌の完全治療」を謳ったホームページを開設している者である。 原告(40歳代の女性)は、病院で「悪性の右乳癌、頚部リンパ節転移」と診断され、 […]
宝石貴金属の販売会社従業員から訪問販売により、ダイヤルース(ダイヤの石)とプラチナリングを購入した消費者(被告)が、信販会社(原告)と立替払い契約を締結したところ、特定商取引法4条書面の交付を受けていないとして(商品の引渡時期等の記載がない)、クーリングオフ期間を経過してなされた解除の意思表示が有効とされ、解除は割販法30条の4により信販会社に対抗できるとされた事例 札幌地方裁判所 原啓一郎 2005年(平成17年)4月28日 平成15年(ワ)第2219号 平成16年(ワ)第1704号 立替金請求事件 日本信販(株)、(株)アプラス、(株)ジェム・アーク 八幡敬一弁護士 011(272)777 […]
宝石貴金属の販売会社従業員から、展示会場へ連れ出された消費者(被告)が、帰宅したい旨告げたにもかかわらず勧誘を続けられたため、困惑してネックレスを購入し、信販会社(原告)と立替払い契約を締結したことにつき、消費者契約法4条3項2号(退去妨害による契約の取消)により立替払い契約の取消を認めた事例 札幌地方裁判所 氏本厚司 2005年(平成17年)3月17日 平成15年(ワ)第2657号 立替金請求事件 (株)オリエントコーポレーション、(株)ジェム・アーク 八幡敬一弁護士 011(272)7776 被告は、高齢の女性(当時81才)であるところ、宝石貴金属の販売会社(原告補助参加人)の従業員から、 […]
信販会社が事前にカード利用代金明細書を送付した上で自動振込がされていても、振込による弁済の都度、直ちに18条書面を交付しなければ貸金業規制法43条の適用はできないとして、原告の過払金返還請求を認めた事例 名古屋簡易裁判所 黒瀬久忠 2005年(平成17年)4月27日 平成17年(ハ)第415号 不当利得返還請求事件 (株)名古屋カード 天野勲司法書士 052(853)0409 被告は(株)名古屋銀行系列の信販会社である。本件の被告は原告に対し、毎月10日の振替日の約2週間前にカード利用代金明細書を送付し、原告は(株)名古屋銀行の口座から自動振替の方法により弁済をしていた。被告は、このように事前 […]
①月収約16万円の債務者に約350万円を年利28%で貸付することは、過剰貸付に当たる。②多重債務者に対して、利息制限法による引直しの説明をせずに債務一本化をなすことは、借主の無知に付け込み、自らのみが債権者となり、高利の利息から多額の利益を得ようとするもので違法性が強度である。③「無保証人」等の虚偽の広告は違法。以上より強度の違法性故に貸付は公序良俗違反で無効。貸付金について、不当利得も成立しない。 名古屋地方裁判所 渡辺修明 2005年(平成17年)5月24日 平成14年(ワ)第2398号の8 損害賠償請求事件 (株)日立ファイナンス 服部誠至弁護士 052(955)6621 本判決は、債務 […]
破産・免責後の不当利得返還請求の是非(肯定) 京都地方裁判所 中村隆次 平成17年(ワ)第254号 2005年(平成17年)4月18日 不当利得返還請求事件 プロミス(株) 功刀正彦弁護士 075(222)7090 事案の概略 弁護士の受任通知及び取引履歴の開示請求に対し、プロミスがこれを無視したが、契約の日付が平成7年であったため、平成16年現在において不当利得が発生している可能性が高いという補足を添えて、京都地裁に破産中立を行った。 裁判の争点 破産を申し立てて、債権者に名前を記載しておきながら、一方では不当利得の返還請求を行うのは禁反言ではないか。 免責決定を受けたことで、例えみなし弁済 […]
シティズの地方裁判所から簡易裁判所への移送申立に対し、そのほとんどがシティズの主張を認めて事件は簡易裁判所に移送されているところ、本件は、裁判所の合理的裁量に委ねられているとして、シティズの抗告を棄却して地方裁判所の管轄とした事例 大阪高等裁判所 大谷正治、高田泰治、藤本久俊 2005年(平成17年)6月7日 平成17年(ラ)第294号 移送申立却下決定に対する抗告事件 (株)シティズ 水谷英二司法書士 052(916)5080 シティズは、過払金返還請求訴訟が地方裁判所に提起された場合に、簡易裁判所における専属的合意管轄があることを理由に、すべて簡易裁判所に移送申立を行っており、そのほとんど […]
免責確定後の取立行為は社会的相当性を欠く違法行為であり、免責後回収額全額につき、損害賠償を認めた事例 大阪高等裁判所 井垣敏生、高山浩平、神山隆一 2005年(平成17年)5月26日 平成17年(ネ)第750号 損害賠償請求控訴事件 宮竹商事こと竹内建夫 由良尚文弁護士 0772(20)1122 本件は、貸金業者(個人)が貸付に際し、「ワシは破産を認めない」などと言い含めて貸付を行い、債務者が破産免責をした後も、免責確定後、「破産は認めない言うてたやろ。払え」などと迫り、債務者から合計金101万9000円を取り立てた行為につき、債務者から同額の損害賠償請求を求めた事案である。 原審の京都地方裁 […]
レイク(GEコンシューマー・クレジット(株))に対する過払金請求訴訟において、レイクが開示した10年前からの取引経過の冒頭に記載された貸金残金については、レイクに立証責任があるとして、冒頭の残高をゼロにして計算をした過払金額の請求を認容した事例 宇都宮地方裁判所真岡支部 平賀俊明 2005年(平成17年)3月2日 平成16年(ワ)第39号 不当利得返還請求事件 GEコンシューマー・ファイナンス(株) 柿沼祐三郎弁護士 0277(54)1221 本件は、GEコンシューマー・クレジット(株)(以下「GE」という)を含む5社のサラ金に対して、推定計算に基づいて、合計600万円余の過払金を請求して提訴 […]
いわゆる「振込め詐欺」の被害者らが、振込先の銀行4社に対し、詐欺の事実を訴え、当該口座を凍結して貰い、振り込んだ金員の返還を求めた。しかし、銀行がこれを拒んだため、訴訟を提起したところ、債権者代位権に基づいて返還請求を認めた事例 東京地方裁判所 藤山雅行、金光秀明、萩原孝基 2005年(平成17年)3月30日 平成16年(ワ)第14793号 不当利得返還請求事件 (株)東京三菱銀行 村上徹弁護士 03(5212)4646 原告らは、「オレオレ詐欺」の被害に遭い、いわれるままに示談金として金員を振込んだ。しかし、騙されたことに気づき、振込先の銀行に連絡し、銀行は口座を凍結してくれた。原告らは、銀 […]
大部分が法により差押えを禁止されている年金の給付金で構成されている預金債権に対する仮差押えが不適法であるとして仮差押決定が取り消された事例 大阪簡易裁判所 石堂和清 2005年(平成17年)5月12日 平成17(ト)第178号、平成17年(サ)第60254号 債権仮差押命令申立事件、保全異議申立事件 ゆとり 久岡英樹弁護士 06(6365)1808 本件は、貸金業者から年金担保融資を受けていた79歳の女性が弁護士に依頼して年金証書、預金通帳等を取り戻したところ、年金が振り込まれる銀行口座に対する仮差押えがなされた事案である。 裁判所は、預金債権額の大部分が年金の給付金で構成されており、債権者が […]
生活保護(医療扶助)の受給を受ける者の公的年金のみが入金される銀行預金が差押えられたことに対し、差押えの取消しの申立てをしたところ、即日にその申立てが認められた事例 千葉地方裁判所松戸支部 小池洋吉 2004年(平成16年)8月19日 平成16年(ヲ)第1027号 債権差押命令取消申立事件 玉ノ井雄一司法書士 047(334)4513 本件は、主たる収入を遺族年金等の公的年金(月額約13万円)のみとする生活保護(医療扶助)受給者が、上記年金のみが振込まれる銀行預金口座を差押さえられたため、差押えの範囲の変更(差押えの取消し)の申立てを行ったものである。 申立て理由として、①預金口座には公的年金 […]
本件は廃棄ロス・棚卸ロス原価に対してチャージ(ロイヤリティ)が付加されるいわゆるコンビニ会計を問題としたものであり、本件提訴後に公正取引委員会からフランチャイズシステムについての調査報告がなされ社会問題として認知された。本件は東京地方裁判所の第一審判決を変更して、廃棄ロス・棚卸ロス原価に対してチャージが付加され不当利得となることを認め、コンビニ本部に対し不当利得金の支払いを命ずる判決をなした 東京高等裁判所 西田美昭、高野伸、小池喜彦 2005年(平成17年)2月24日 平成16年(ネ)第3368号 不当利得返還請求控訴事件 (株)セブン―イレブン・ジャパン 上田栄治弁護士 03(5537)5 […]