証券会社は、証券販売後も、投資家が間違った情報や認識の下で、不当に不利益や損失を受けることがないよう、情報等の提供や適切な助言を行うべき信義則上の注意義務を負っている(助言義務)。特に、外貨建ワラント取引の場合、販売後において、投資家が過大な損害を被ることのないよう価格情報の提供や処分時期についての適切な助言を行うべきであるとした事例 大阪地方裁判所堺支部 平成5年(ワ)第1471号 平成9年5月14日(控訴) 損害賠償請求事件 三木俊博弁護士 野村證券株式会社 1 この投資者は、本件被害にあった平成3年1〜2月当時59歳で、職業は会社役員であった。以前から野村證券より勧誘を受けて株式現物取引 […]
商品取引員は、商品取引所法およびその下位法令・諸規則の精神に照らし、それらを遵守することはもとより、大臣免許を受けた専門業者として高度な善管注意義務を負っている。民法上、受託者が専門的な知識・経験を基礎として素人から当該事務の委託を引き受けることを営業としている場合、特にそれが公認されている場合、受託者の注意義務は当該事務についての周到な専門家を標準とする高い程度のものとなるとした事例 大阪地方裁判所 平成6年(ワ)第1036号 平成9年5月12日(確定) 損害賠償請求事件 三木俊博弁護士 ミリオン貿易 1 委託者は、取引開始時に38歳で、亡父創業の事業会社を承継している経営者。商品先物取引は […]
破産管財人が選任された破産事件において、破産手続が終結する前に新得財産である給与に対してなされた差押について、裁判所が職権で担保を立てさせないで強制執行停止決定をなしたうえで、破産者からの執行抗告を認めて差押命令を却下した事例 福岡高等裁判所 平成9年(ラ)第86号 平成9年5月8日 債権差押命令に対する即時抗告事件 瀬戸久夫弁護士 栄久商事(加藤巌) 破産管財事件において、破産宣告後、手続終結前に破産債権者が新得財産である給料に対してなした差押を違法として却下した事例である。同様なケースで仮差押の効力を否定した判例として、大阪高決1995年3月16日(判タ887号258頁)があるが、本件は債 […]
貸金業者が本店所在地の東京簡易裁判所で訴えを提起したことにつき、業者の営業店である大阪府茨木市を前提に債務者の求めた大阪簡易裁判所への移送を認めた事例 東京地方裁判所 1997年(平成9年)5月2日 (株)武富士 貸金業者が大阪茨木店での融資した貸金について、業者の本店所在地の東京簡易裁判所に貸金返還の訴えの提起をした。債務者は業者の管轄合意約款は附加的合意管轄であり、債務者の住所地の大阪簡易裁判所への移送申立をした。東京簡易裁判所は債務者の右移送申立を却下し、その理由として約款を優先させるべきであるとした。右却下決定に対し債務者は東京地裁に即時抗告をした。 東京地裁は債務者の主張を認め、大阪 […]
商品先物取引において、委託者が取引中止を申し出た場合に、その翻意を求めて行き過ぎた説得を行うことは、委託者と商品取引員との間の委(受)託契約から生じる「忠実義務」に違反して、債務不履行となるとした事例 大阪地方裁判所 1997年(平成9年)4月25日 岡藤商事 ① 平成5年10月5・6日に委託者の方から取引員店頭に出向いて委託契約を締結。その際、投資資金として1000万円を預託。担当祉員の勧誘で、当初からパラジウム80枚買建と金80枚売建(広義での両建て)10月8日に、担当社員の勧誘でパラジウム20枚を仕切処分して、ゴム60枚を買建。 ② 10月12日に、委託者は取引員店頭に担当社員を訪問して […]
(株)高島屋の取締役が総会屋に株主総会対策費として不法な支出をして起訴された。この不法な支出をした取締役並びに代表取締役・常務以上の取締役らに対し、株主から会社にこの損害金を返還するよう株主代表訴訟を提起し、①株主総会のマスコミへの公開など株主総会の運営の改善、②関与者以外の取締役らの連帯責任、③使途秘匿金も賠償することを条件に和解した事例 大阪地方裁判所 1997年(平成9年)4月21日和解 (株)高島屋 株式会社髙島屋が暴力団総会屋に対して株主総会対策として毎年8000万円を支払続けてきた事実は商法違反として同社の担当役員らが大阪地方裁判所に起訴された。 原告株主は同社社長並びに常務以上の […]
水道がない(水が使えない)という瑕疵のある土地を騙されて住宅地として購入させられた事案について、これを仲介した宅地建物取引業者には媒介契約上の善管注意義務と宅建業法上の説明義務違反があるとして責任を認め、これに対する損害賠償を認めた事例(過失相殺2割) 大阪高等裁判所 1997年(平成9年)3月25日 (株)福屋工務店 【事案の概要】普通のサラリーマンである被害者(妻と小学生の2人の4人家族)は、平成元年ころ、将来住宅を建てる予定で、週刊住宅情報に掲載されていた3重県名張市の○○丘分譲地の土地(約45坪)を1322万円で購入した。その約1ヵ月後、本件土地への水道の給水はないことを知り、さらに調 […]
割賦購入あっせん契約上の残債務について、将来分の手数料を控除した残債務を元金とする内容の準消費貸借契約にも、割賦販売法30条の3第2項の適用が及ぶとして、年6パーセントの割合を超える利息および遅延損害金の約定を無効とした事例 釧路地方裁判所 1997年(平成9年)3月25日 日本信販(株) 「原告は、被告日本信販とのクレジット契約により家電製品を購入し、その後、同契約上の残債務について、原告と同被告との問で金銭消費貸借契約が締結されたものとして公正証否が作成された。 本件は、原告が、右公正証書について、適怯な授権によらずに作成されたものであること、内容が割賦販売注に違反するものであること等を理 […]
建物賃貸借契約において明渡時に借主に建物の修繕費ないし清掃クリーニングをすべき特約について通常の使用による自然損耗にについてまで借主に原状回復を求めるのは公平に反するとして特約の効力を認めず敷金全額の返還を認めた事例 東京簡易裁判所 1997年(平成9年)3月19日 建物貸主 本件は、建物の借主が貸主に対し敷金返還請求をしたことに対し貸主が賃貸契約の特約により建物明渡時に建物の破損、汚損または付帯設備の修繕費等は借主の負担であり、専門業者またはこれに類するものの室内全般にわたる清掃クリーニングをすることとなっているとして、同費用を差し引いた残金3万円余しか借主に返還しなかった。 判決は、建物は […]
1 ATMによる貸付の際、機械から排出される書面は、包括契約書と併せてみれば、貸金業法17条の書面ということができるとされた事例 2 ATMによる返済で、現金投入後に排出される書面によってはじめて元金、利息、損害金の区別がわかる場合、その返済については「任意」性に欠け、貸金業法43条の適用はないとされた事例 東京地方裁判所 1997年(平成9年)2月21日 (株)武富士 包括契約締結後、ATMによる貸付、返済が行われた場合に、貸金業法43条の「みなし弁済」の適用の有無が争われた事案である。 争点は3つあったが(要旨参照、第12は省略)、判決は、第1につき、包括契約書および各国の借入の際に交付さ […]
敷金返還につき、本件建物は共稼ぎ夫婦によって社会通念上通常の方法により使用され、自然ないしは通例的に生ずる損耗以上に悪化していることを認めるに足りる証拠はない、として、修繕費の負担を主張する被告に対して、敷金の全額返還を命じた事例 川口簡易裁判所 平成8年(ハ)第587号 平成9年2月18日 敷金返還請求事件 本人訴訟 エイブル不動産 (経過) 原告は、平成5年12年19日、被告から本件建物を賃借し、敷金14万2000円を被告に預託した。 原告は、平成8年8月16日、本件建物の賃貸借契約が終了したので、本件建物を被告に明渡した。 被告は、原告に対してリフォーム代金として12万2312円を返還す […]
当事者間に和解交渉、調停手続において頑なに「みなし弁済」を主張し訴訟にまで発展した事案において、金融業者側が従前の対応を全面的に改め、自社の全店舗において代理人である弁護士と交渉、調停手続での交渉等について真摯に誠意をもって行なう旨確約した事案 仙台簡易裁判所 平成8年(ハ)第86号、平成8年(ハ)第2526号 平成9年1月28日 貸金請求事件(本訴)、不当利得等返還請求事件(反訴) 荒 中弁護士 022(265)5077 株式会社ユアーズ 本件は、裁判外における示談交渉、債務者申立てに係る民事調停手続において頑なに「みなし弁済」を主張し、遅延損害金の額が相当額に達した段階で貸付金残金等の支払 […]
証券会社の外務員が、銀行の利子以上に有利に運用する旨述べて顧客から金員を預かり、これを自らの商品取引に流用した行為について、外務員の顧客に対する右行為は外見から見て会社の業務の範囲内に属するものということができるとして、証券会社に使用者責任を認めた例 大阪地方裁判所 平成6年(ワ)13133号 平成9年11月12日 損害賠償請求事件 後岡良和弁護士 06(203)6677 岡三証券株式会社 本件は、証券会社の外務員の不当な勧誘行為によって被った損害の賠償を求めた事例である。 原告は平成5年10月頃、被告会社の外務員に対し原告がかねて被告会社に依頼して買い付けていた中期利付き国債および投資信託の […]
① 一括弁済を請求することなく、残元本の利用を継続させたときは、期限の利益喪失約款に該当する事由があっても、従来どおりの約定で支払うことの新たな黙示の合意が成立したと認めた事例 ② 債務者から調停申立をし、一括返済の資金を用意して解決を図った。しかしサラ金業者がこれを拒否し、調停中にも関らず、訴訟を提起し業者主張の残元金と約定損害金の支払いを請求したが、損害金請求は権利濫用として許されないとした事例 福島簡易裁判所 平成8年(ハ)第517号、平成8年(ハ)第739号 平成9年4月9日 貸金・不当利得返還請求反訴事件 浅井嗣夫弁護士 株式会社ジェック 被告(被告兼反訴原告)は債務弁済協定調停申立 […]
2ドア冷凍冷蔵庫、和タンス、丸型テーブル、ルームエアコン、洗濯機は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するのに必要な生活必需品であり、民事執行法131条1号の差押禁止動産に該当するとして、右各動産に対する差押の執行処分を取り消した事例 名古屋地方裁判所 平成9年(ヲ)第3004号 平成9年3月7日 執行官の執行処分に対する異議申立事件 平井宏和弁護士 (個人債権者) 破産者は、平成8年11月28日、破産宣告および同時廃止の決定を受けた。 債権者(個人)は、平成8年12月26日、確定判決に基づいて次の動産を差し押さえた。 ①ナショナル製2ドア冷凍冷蔵庫、②和タンス、③書籍戸棚、④木製事務机、⑤丸 […]
借換えの場合に貸金業規制法43条の適用を受けるためには、借換時の交付書面に旧債務の内容と現実に交付した金額の記載が必要であるとして、借換前の当初の貸付から通算して利息制限法を適用し、すでに過払いとなっているとして貸金請求を棄却した事例 宮崎簡易裁判所 平成8年(ハ)第1177号 平成9年1月16日(確定) 貸金請求事件 西田隆二弁護士 0985(29)6077 太平洋観光株式会社(商号太平洋信販) 貸金業者の中には、融資限度額の増額時や一定の取引期間の経過にあたって新たに契約書を作り直す「借換え(書換え)」を行なう会社が多い。 このような場合、業者は訴訟等において、直近の契約書とその後の取引経 […]
両建等の特定売買がきわめて高い割合で行なわれ、かつ本件取引により生じた損金に占める手数料の割合が大きいことは、特別の事情あるいは合理的な理由がない限り、本件取引が被告らの誘導によりなされた無意味な反復売買(転がし)を認定し被告の不法行為責任を肯定した事例 大阪地方裁判所 平成6年(ワ)第11583号 平成8年6月14日 損害賠償請求事件 白出博之弁護士 06(6363)2191 岡藤商事株式会社 1 本件は、厚生年金生活者たる77歳の原告の、昭和62年7月から約4年半の5取引所、8商品、6152枚の取引に「断定的判断の提供、適格性を欠く顧客に対する勧誘、一任・無断売買、新規委託者保護義務違反、 […]
包括契約書と個別契約書の組合せ方式による貸付につき貸金業法一七条の適用を否定した上告審判決
-名古屋高等裁判所平成六年(ツ)第六号不当利得金返還請求上告事件平成8年10月23日判決-
毎目集金をする日賦貸金業者にあっても、貸金業規制法43条1項の「みなし弁済」の適用を受けるためには、同法18条1項所定の受取証書をその都度直ちに交付しなければならないとして、業者のみなし弁済の主張を排斥して、利息制限法による元本充当計算をした残額の支払のみを認めた事例 中津簡易裁判所 平成8年(ハ)第5号 平成8年11月1日 保証債務金請求事件 河野聡弁護士 0975(33)6543 株式会社ダイヤモンドリース 日賦貸金業者は100分の70以上の日数、集金をすることを1つの要件として、109・5%までの特例金利が認められている。本件の業者は、貸金業規制法18条1項所定の受取証書を弁済日の翌日な […]
電話キャッシング」の形態による貸付けであることを唯一の理由として、消費者の住所地への民訴法31条による裁量移送を認めた事例(確定) 東京簡易裁判所 平成8年(サ)第17193号 平成8年10月31日 移送申立事件 河野聡弁護士 0975(33)6543 株式会社みその 最近、「電話キャッシング」の業態が広まり、電話1本で貸付金が銀行口座に振り込まれる形での貸付けがなされることが多くなった。この場合業者は遠隔地に所在するわけだが、契約書には合意管轄として業者の所在地の簡易裁判所が記載されており、遅滞した場合には遠隔地で貸金請求訴訟が提起されることになる。借主が契約内容その他を争うとしても、裁量移 […]