フェイクで選挙が盗まれる

フリージャーナリスト 西谷文和

 2024年3月、イスラエルに飛びエルサレムで反戦集会を取材した。毎週土曜日の日没後、つまりユダヤ安息日の終了直後に数万人の市民が大統領府に繰り出して、そこからネタニヤフ首相官邸まで大規模デモを行うのだ。「人質交換」「即時停戦」「ネタニヤフの退陣」。人々は手作りのプラカードを掲げ、ドラムに合わせて練り歩く。沿道の市民も参加してくるのでデモ隊は膨れ上がりながら「ネタニヤフ辞めろ」のシュプレヒコールになる。政権側は警察を使って参加者を威嚇し逮捕する。その様子をカメラに収めながら「この調子でデモが続けば、人々は弾圧をはねのけてネタニヤフを打ち倒し、アラブにも寛容な新政権が樹立するかも」と期待しつつ帰国した。

 10月、再びイスラエルに入った。ネタニヤフはガザだけではなく、レバノン・ヒズボラにも戦線を拡大し圧倒的な軍事力で空爆を続けていた。ヒズボラの後ろ盾であるイランが報復攻撃で無数のロケット弾を撃ち込んでくるので、テルアビブ、エルサレムの人々はシェルターに逃げ込むようになった。世論は逆転していた。「ユダヤの敵ハマス、ヒズボラを根絶やしにしろ」「ネタニヤフは嫌だが、この・・・

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