消費者法制度のパラダイムシフトに関する専門調査会が令和7年6月13日に終回を迎え、報告書(案)が公表されました。この報告書案では、消費者の有する脆弱性を正面から捉え、「人は限られた範囲でしか合理的な判断ができないという『限定合理性による脆弱性』がある」と記載されています(報告書案9頁)。
明治時代に制定された民法には、当時の最先端の経済理論である新古典派経済学の思想が根底に流れており、およそ「人」は「合理的経済人」であることを前提として法律が策定されています。合理的経済人は、情報を完全に有し、自己の利益の最大化のためにその情報を完全に利用できます。そのため、仮に、情報収集に失敗したり、判断を誤ったりしたりした場合であっても、それが是正されるべきほどの事情(詐欺、強迫、公序良俗違反など)がない限り、契約(意思表示)が訂正されることはありません。しかし、この「合理的経済人」の存在は、社会を総体としてみたときの経済理論には、ある程度合致するものの、個々の人の個々の契約(意思表示)の場面に着目すれば、合理的経済人の存在は幻想にすぎません。誰もが投資商品の価額の推移を予想できず、ある契約を締結する・・・
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