日本の食料危機と農家のデモ
─5年が農と食と命を守る正念場─

東京大学大学院特任教授 鈴木宣弘

 今、私が全国各地の現場を回っていると、あと5年が本当に正念場だと実感する。頑張ってる農家の皆さんの疲弊を放置し、農業の崩壊を進めてしまい、一部の企業さえもうかればいいという流れを今食い止めなければ、あと5年で日本の農と食と国民の命の危機は一気に加速しかねない。

 「令和のコメ騒動」も、流通悪玉論、農協悪玉論で目くらましをし、「輸出8倍だ」「輸入米を増やそう」といって、苦しむコメ農家を放置してしまえば、本当に日本からコメさえも消えていくことになる。

 政府は今、コメの輸出量を2030年までに8倍(現在の4万6000トンを35万トン)に増やす方針を打ち出し、輸出米を作れば10アールあたり4万円の補助金を出すという。それができるなら、なぜ国内の米が不足基調にあるなかで、国内の主食米供給を増やすために今、10アールあたり4万円を支援しないのかということが問われている。

 一方で、トランプ氏の自動車関税の見直しを懇願するために、「盗人に追い銭」外交を展開して、一目散に米国に「何から譲ったらいいですか」と聞きに行き、帰国後、日本の食料安全保障の最後の砦である、切ってはならないカ・・・

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