兵庫県知事選と東京都知事選における買収・被買収事件

神戸学院大学法学部教授 上脇博之

 国政選挙・地方選挙において買収することは、“選挙の公正さ”を害する悪質な行為なので、公職選挙法が禁止しています。買収には有権者買収のほか、運動者買収もあります。選挙運動者にその選挙運動の対価として報酬が支払われれば、報酬を支払った者は買収罪に、報酬を受け取った運動者は被買収罪に問われます。

 近年の選挙では、選挙運動の模様を動画やSNSで配信し得票に結び付けて当選を目指す運動が展開されています。業者が選対から言われるまま機械的に動画制作等を行うだけであれば、選挙運動にはならず報酬の授受があっても犯罪ではありません。しかし、業者が主体的で裁量権のある形で動画制作等を行うと選挙運動者に該当し、報酬の授受があると罪に問われうることになります。2024年に執行された兵庫県知事選と東京都知事選で、犯罪の疑いが生じる選挙運動が行われていたのです。

1 兵庫県知事選での齋藤元彦知事買収・被買収事件

(1)県議会不信任案可決後の出直し選挙で再選

 2021年執行の兵庫県知事選において齋藤元彦氏が初当選。しかし、西播磨県民局長が昨年3月に「斎藤元彦兵庫県知事の違法行為等について」と題・・・

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