弁護士(大阪) 吉岡康博
1 はじめに
今回の白書で取り上げる裁判例は、不動産業者による不動産の違法な販売と売買代金等の融資を行った銀行に共同不法行為責任が認められた事例、インターネットバンキングにおける不正出金について銀行の責任が否定された事例、指定暴力団幹部等に対する不法行為について消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとされた事例、旧優生保護法の規定が違法であったとして国家賠償請求を行ったことについて、国による除斥期間の主張が否定された事例、警察が市民の個人情報を民間業者に提供したことにつき、提供行為のみならず個人情報の収集・保有についても違法性が認められた事例、森友学園事件に関して行政機関による行政文書の不開示決定が控訴審において取り消された事例及び福島第一原発事故により避難を余儀なくされた住民の東京電力及び国に対する損害賠償請求が認められた事例である。
2 不動産業者による不動産の違法な販売と売買代金等の融資を行った銀行に共同不法行為責任が認められた事例
東京地判令和3年10月19日〔1〕は、不動産業者が違法に不動産を販売し、これに関して売買代金や建物建築のための請負代金について融資を行・・・
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