第11章 宗教

弁護士(大阪) 加納雄二

1 はじめに

 今年度は、旧統一教会関連の判例が多いが、宗教団体等への損害賠償を認めた判決がある。

2 不法行為の判断基準の新たな枠組みと、関連判例

(1)最高裁判決(2024年7月11日)(速報2635)〔3〕

 この判決は、旧統一教会に対する献金の損害賠償請求について、これを請求しないとの被害者の念書があった。これを有効とし、請求を棄却した地裁、高裁の判決を、最高裁は破棄して、高裁に差し戻したものです。この最高裁判決は、勧誘行為の違法性の判断基準につき、宗教団体等は、「献金の勧誘に当たり、献金をしないことによる害悪を告知して寄付者の不安をあおるような行為をしてはならないことは勿論であるが」としたうえで、「それに限らず」として以下のような判断基準を示した。

 「寄附者の自由な意思を抑圧し、寄附者が献金をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることや、献金により寄附者又はその配偶者その他の親族の生活の維持を困難にすることがないようにすることについても、十分に配慮することが求められるというべきである」とした。

 その基準として、①勧誘に用いられた言・・・

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