第5章 証券・金融商品

弁護士(大阪) 中嶋 弘

1 仕組債① 東京地裁令和6年3月14日判決〔1〕

(1)事案の概要

 原告は昭和14年生まれの女性であり、年金生活者であるから損はしたくない、多くの利息は求めないとの意向を示していたが、仕組債8銘柄や外国債券3銘柄を購入したことがあった。過去の仕組債購入時に、担当者が仕組みを説明した際は、商品を理解できないなどと述べたことがあった。

 本件で問題となった仕組債1〜3は期間5年の為替連動債であり、参照指標の下落率により金利、早期償還の有無、ノックインの有無及び満期償還額が決まるものであった。

 仕組債1〜3はノックインして満期償還で元本割れが生じたので、原告は被告に対し、適合性原則違反と説明義務違反による損害賠償を求める訴訟を提起した。

(2)判旨

 本件仕組債1〜3について、損益を画定(ママ)する要素は1種類の為替の上下に尽き、その仕組み自体が殊更複雑であるということはできないが、これらの損失利得に関わる為替の基準値が三つ存在し、これらの基準値と実際の為替相場の対応によって早期償還や利息、償還額がそれぞれ決定する設計であり、これらの理解には少なくとも為替の基本的理解に加え、損益を・・・

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