第1章 消費者信用(金融)

弁護士(大阪) 井上耕史

1 はじめに

 この1年間に本誌で掲載された裁判例は6件にとどまり、うち過払金請求に関するものは1件のみであった。

 しかし、既に何年も前に下級審裁判例の積み重ねによって決着済みであるはずの論点についても、裁判官が忘れたころに、再び蒸し返してくることもある。

 これまでの到達点について、過去の「消費者法白書」や『過払金返還請求・全論点網羅2017』(民事法研究会)などの文献にあたって確認することも引き続き必要である。

2 過払金の充当ないし一連一体計算

 第1の基本契約による取引を完済後、取引中断期間を置いて、第2の基本契約を締結した事例については、最二小判平成20年1月18日・民集62-1-28が示した基準に従って事実上1個の連続した貸付取引であるか否かを評価し、過払金充当合意の有無を認定することとなる。

 なお、第1の基本契約と第2の基本契約とで、借入限度額や約定利率が変更されていることを理由に、事実上1個の連続した貸付取引ではない、との主張が貸金業者側からなされることがある。しかし、借入限度額の増額や、約定利率の引下げといった事実は、取引継続による優良顧客の優遇策としてなされる・・・

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