消費者教育のパラダイムシフト?

公益財団法人消費者教育支援センター理事長 名古屋経済大学名誉教授

田口義明

総論の力

 消費者庁、消費者委員会では、消費者法制度を理念から見直すパラダイムシフトの議論が進められている。消費者の脆弱性への対策を基軸とし、消費者が関わる取引を幅広く規律する法制度のあり方を検討するとのことである。このプロジェクトについて、一部には「壮大な大風呂敷」との見方もあるようだが、そのように捉える必要はないのではないか。

 近年の消費者契約法改正の経緯などをみると、個別具体的な立法事実の積み上げによって個々の規制やルールの改正を目指すアプローチに限界があることは否定できない。ここで思い起こされるのは、2000年代初頭、消費者の権利の法定化を目指すなか、当時の内閣府、国民生活審議会では、「21世紀型消費者政策の在り方」という、これまた大風呂敷的なアプローチが採られ、結果として、消費者の権利を盛り込んだ基本法改正が実現した。総論には総論の力がある。今回のパラダイムシフトについても、各論アプローチでは打ち破れなかった課題の突破口となることを期待したい。

消費者教育は万能?

 パラダイムシフトのあり方を検討している消費者委員会・・・

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