諸外国におけるつけ込み型勧誘からの救済
─日本の民法・消費者法は世界の趨勢から取り残されている─

弁護士(愛知) 岩城善之
弁護士(大阪) 薬袋真司

1 はじめに

 高齢化の著しい進展や成年年齢の引下げなどに伴い、合理的に判断を行うことが困難な事情を利用して契約が締結された場合(つけ込み型勧誘)において、表意者を民事的に救済する仕組みの整備が求められている1

 この点に関して、民法(債権法)の改正の議論では、暴利行為という形で検討がなされたが、合意形成が困難だとしてその立法は見送られた。また、消費者契約法の改正の議論においても、つけ込み型勧誘として検討されたが、3度の実体規定の改正を経ても、規定の不明確さなどが問題とされ、一般的な規定を設けることができていない状況にある。

 このような日本の状況は適切なのかという問題意識から、諸外国におけるつけ込み型勧誘(主として、判断力や経験の不足や依存関係に乗じた契約)に関する民法・契約法の規定を調査したので、その結果を報告する2

2 諸外国におけるつけ込み型勧誘に関する規定

(1)ヨーロッパ

 ドイツ民法は、相手方の強制状態、無経験、判断力の不足、又は著しい意思薄弱に乗じて、給付に対して著しく不相当な財産的利益を自己もしくは第三者に約束又は提供させる法律行為を、・・・

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