不公正な取引行為と取引過程
─取引過程の全体を対象とした規制の必要性─

弁護士(大阪) 西塚直之

1 はじめに

 日弁連は、2022年2月18日の「公正な消費者取引を確保するために分野横断的に適用される行政ルールの整備を求める意見書」において、消費者取引に関し、業種・業態を問わない横断的な行政ルールの整備を求め、その中で、「広告・勧誘の段階にとどまらず、義務の履行や契約の解消の段階を含め、全ての取引過程を対象として、不公正な取引行為を定め(規制す)ること」を求めている。この指摘を踏まえ、本稿は、取引過程の場面ごとに不公正な取引行為を整理し、取引過程全体を規律の射程とする必要性を検討する。

2 取引過程における各場面

 消費者取引は、広告・勧誘から始まり、契約の締結、事業者による義務の履行、事業者からの請求、さらには契約の解消といった取引過程が存在する。その過程の各場面において、不公正な行為が行われる可能性がある。

(1)広告・勧誘の場面

 この場面での代表的な不公正な取引行為は、虚偽広告などの欺まん的な取引行為である。この点は、景品表示法が横断的な規制を行っている。

 もっとも、他にも、消費者を威迫して困惑させる行為(特商法6条3項、消安法施行令3条3号参照)、判断力の不足につ・・・

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