生活保護・不服審査請求
─78条返還処分を取り消す─

弁護士(東京) 林 治

1 事案の概要

 審査請求人は、2015年4月から祖母(母の母)と二人世帯で府中市内で生活保護を利用した。当時、審査請求人は中学生であった。

 その頃、審査請求人の両親が離婚し、離婚の際の合意として、審査請求人名義の口座(以下「本件口座」という)に養育費や進学費用などを支払うとされた。その合意に基づき、祖父(父の父)から養育費等が振り込まれることになった。

 しかし、その合意内容を審査請求人は知らず、本件口座は審査請求人の母が新たに開設し、管理も母が行っていた。なお、母は審査請求人とは別世帯で、本件口座の存在自体を審査請求人は知らなかった。母も府中市内で生活保護を利用していたので、審査請求人とは交流があった。保護費は同居の祖母の口座に振り込まれていた。

 その後、2020年2月、同居していた祖母が施設に入居したので、審査請求人の単身世帯になったが、保護費の振込先の口座は本件口座とは別の口座であった。

 そのため、単身世帯となった以降も審査請求人は本件口座に祖父から金銭が送金されている事実を一切認識することができなかった。

 2021年3月6日、生活保護が廃止され、処分庁は同年10月14日・・・

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