弁護士(埼玉) 池本誠司
はじめに
日弁連主催消費者庁・消費者委員会15周年シンポジウム(2024年10月19日)における基調報告(パート2)の要点を紹介する。
消費者庁・消費者委員会は、2009年9月の創設以来、様々な課題について取組みを続けてきた。その中で、見るべき成果を得られた分野と不十分な分野とほとんど進んでいない分野がある。これらの課題を個別的に論じるときりがないので、視点を絞って論じたい。
消費者法制度の整備と消費者政策の理念の再構築
消費者庁創設に向けた「消費者行政推進基本計画」(2008年6月27日閣議決定)は、「明治以来、我が国は各府省庁縦割りの仕組みの下それぞれの領域で事業者の保護育成を通して国民経済の発展を図ってきたが、……今や『安全安心な市場』、『良質な市場』の実現こそが新たな公共的目標として位置付けられるべきものとなったのである。それは競争の質を高め、消費者、事業者双方にとって長期的な利益をもたらす唯一の道である」と高らかにパラダイムの転換を宣言した。
しかし、2013年2月28日第183回国会における安倍首相の施政方針演説は、「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指し・・・
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