ルポ東尋坊──生活保護で自殺をとめる

著者:下地 毅
発行:緑風出版
価格:2,400円(税別)

 著者は新聞記者で、本書は朝日新聞福井版で約480回にわたって続けた連載をまとめたものという。東尋坊で自殺しようとする人を見つけるや体を張って止めに入る活動を続ける「NGO月光仮面」を名乗る男性とともに活動する様子が、日記のように克明に描かれていて一気に読まされる。

 「NGO月光仮面」は生活保護の活用を信条とし、“水際作戦”をする行政とも遠慮なく闘う。著者は、生活保護の申請に同行して理不尽な対応をする行政と対峙し、居場所のプレハブシェルターで自殺企図者と生活を伴にし、元自殺企図者からの深夜の呼出しに応じて駆けつける。読み進めるうちに「新聞記者がここまでするのか!?」と驚かされるが、徹底的に現場と当事者に寄り添う姿勢には突き抜けた潔さ(いさぎよさ)がある。完全に当事者目線の筆致は、怒りをもって生活保護窓口の冷酷さを浮き彫りにしており、それ自体が第一級のルポルタージュとなっている。

弁護士(大阪) 小久保哲郎

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