消費者法研究と実務・消費者教育の交錯
─「先端消費者法問題研究」に関与して─

福島大学行政政策学類准教授 中里 真

はじめに

 さる3月31日、適格消費者団体消費者市民ネットとうほく(ネットとうほく)は、編集を担当した『先端消費者法問題研究 第2巻』(民事法研究会、2021)を刊行した。同書は、ネットとうほくが研究者・実務家への呼びかけによってはじめた学習会「消費者被害事例ラボ」(消ラボ)の活動成果を発信するために企画されたネットとうほく叢書の第2巻である。消ラボは、東北地方で各地に点在する専門家が継続的に学習会を開催していることや、そこでの成果を全国へ発信していることなどが評価されて2020年津谷賞実践賞を受賞しているが1、このように活動を書籍という形にすることで、ネットとうほく関係者以外からも感想を寄せられたり、新たな消ラボ参加者を得られたりするなどの影響もあり、とりわけ研究者にとって消ラボの活動を継続して続けていくための励みとなっている。

 さて、『先端消費者法問題研究』は「研究と実務の交錯」との副題を掲げる。これは消ラボの特徴とその活動の源泉であり、次節では消ラボの活動にその立ち上げからかかわってきたものの視点で以下簡単に触れることとする。さらに本稿では、これに加・・・

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