同志社大学法学部教授 川和功子
1 はじめに
本稿は、目的物の「契約不適合」(改正前民法における瑕疵)について比較法的見地から示唆を得ることを目的とする。とりわけ消費者取引に関連する議論についての示唆を得るために、アメリカ統一商事法典(UCC)第2編(売買)、EUの「物品の売買契約に関する議会及び理事会指令」(SGD:物品売買指令2019/771)・「デジタル・コンテンツ及びデジタル・サービスの供給契約の一定の側面に関する欧州議会及び理事会指令」(DCD:デジタル・コンテンツ指令2019/770)1、イギリス2015年消費者権利法2、オーストラリア消費者法3を参考とする。
2 日本法における瑕疵概念
日本法において、債権法改正前から議論されてきた民法における目的物の瑕疵概念に関し、「その物が備えるべき」品質・性能について、その種類の物として通常有すべきものであるとする客観的瑕疵概念を基準としつつ、売主が特別の品質・性能を保証した場合にはそれも基準となるとする見解が有力であったが、現在は、「その契約において当事者が予定していた」主観的瑕疵概念を基準とするのが判例・通説とされている4。
ただし、主観・・・
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