修習貸与金返還請求訴訟の報告

修習貸与金返還訴訟弁護団  橋本大地
永野広美
国府泰道
武本夕香子
及川智志
山上修史

第一審:大阪地方裁判所令和3年1月21日判決
控訴審:大阪高等裁判所令和3年6月30日判決

はじめに

 被告は新66期司法修習生である。平成24年12月から平成25年12月までの13ヶ月間月額23万円の貸与を受けていた。本件は、被告が、給費制から貸与制への移行が違法であると考えて貸与金の返済を拒否していたところ、保証会社であるオリコが最高裁へ代位弁済をして、同社が被告に対して求償金の返還を求めてきたという事案である。

 訴訟において、被告が抗弁として主張していたのは、①権利濫用・信義則違反、②平等原則違反、③公序良俗違反の3点である。以下、被告の主張とそれに対する裁判所の判断を紹介する。

 裁判所は被告の問題提起にきちんと答えているか、このような判決理由で国民が納得しうるであろうか、という観点で以下の裁判所の判決理由をご検討いただきたい。

1 権利濫用・信義則違反

(1)司法修習専念義務

【被告主張】司法修習は午前9時から午後5時までフルタイムであり、生活費全額をまかなえるようなアルバイトに就くことは困難であり生活費を得る手段を絶・・・

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