欠陥住宅紛争の基礎知識(55)
─マンションの瑕疵をめぐる問題(7)─

弁護士(東京) 河合敏男

9 マンションの工作物責任

(1)民法717条は「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と定めている。いわゆる「工作物責任」である。

 さて、区分所有建物の共用部分の設置又は保存に瑕疵があって、これによって他人に損害を与えた場合、責任を負うべき工作物の「占有者」とは誰かが問題となる。

 共用部分からの漏水によって被害を受けた区分所有者の一人が、管理組合に対して、工作物責任に基づく損害賠償を求めた事案において、前橋地裁高崎支部平成23年1月19日判決は、区分所有建物の共有部分の占有者は管理組合であるとの前提で、管理組合の工作物責任を認めた。これに対して同控訴審の東京高裁平成29年3月15日判決は、区分所有建物の管理組合は区分所有建物の共用部分について、民法717条の占有者に当たらないとして、原判決を取り消した。東京高裁によれば、「共用部分の占有者は、管理組合ではなく、本件建物の区分所有者の全員である。」とし、その理由として「管理組合は共用部分を管理しているが、管理責任が・・・

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