弁護士(兵庫) 鈴木尉久
第1 はじめに
クーリング・オフについては、その法的性質や要件に関して、議論を目にすることが比較的多いが、その法律効果についてはそれほど論じられていないように思われる。
法律行為が無効となり、又は、取り消された場合における原状回復義務に関しては、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)による改正後の民法(以下、「改正民法」という。)で、民法121条の2が新設されており、無効・取消の場合、類型論における給付利得の立場から清算が行われることになる。
また、このような改正民法の一般原則による不都合を修正するため、消費者契約法6条の2が新設されている。
民法で定められた原則が変更となっている中、本稿においては、あらためて民法121条の2第1項、消費者契約法6条の2の解釈論を整理し、これと対比させながら、その特則として特定商取引法9条に規定されている訪問販売におけるクーリング・オフの効果を論じることとしたい。
第2 民法121条の2第1項の解釈
1 趣旨
民法121条の2第1項は、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。」と規定・・・
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