書面交付義務の電子化における政省令改正のあり方─国会審議における政省令のあり方の方向性─

弁護士(埼玉) 池本誠司

はじめに

 改正特定商取引法・預託法(2021年6月16日公布)は、①1986年制定以来の預託法の抜本的改正による販売預託商法の原則禁止、②送り付けた商品の目的物返還請求権の即時喪失による送り付け商法の原則禁止、③詐欺的定期購入商法に対する規制の実効性の大幅強化など、高く評価できる内容が盛り込まれた。しかし、他方で、訪問販売、連鎖販売取引等の書面交付義務の電子化を導入したことは、事前の検討手続が全くないまま唐突に導入した手続面でも、書面交付義務の消費者保護機能の低下を招く内容面でも、到底認めがたいものである。

 消費者庁の動きが判明した2020年12月末から2021年5月末までの5か月間に164団体から反対意見書が提出されるなど、全国から厳しい批判が寄せられた。これを受けた国会審議においても、野党から書面の電子化部分を削除する修正法案が提出され、衆議院・参議院の採決においても立憲民主党と共産党が改正法案に反対するなど、消費者庁創設以来初めてとなる野党の反対を押し切って改正法を成立させた点でも大きな汚点を残した法案である。

 その中にあって、衆議院消費者問題特別委員会及び参議・・・

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