ジャーナリスト 三宅勝久
繰り上げ一括請求の違法性を筆者が世に問うたのは、2013年10月発行の『日本の奨学金はこれでいいのか』収録の拙稿「ルポ奨学金地獄」であった。以来約8年にわたって違法回収が繰り返されている。その原因のひとつは、まちがいなく世論の静けさにある。そしてそれは「奨学金問題」に携わる学者の問題意識と無関係ではない。
奨学金ローン問題について大きな影響力を持つ市民団体に「奨学金問題対策全国会議」がある。2013年に結成された。共同代表の大内裕和中京大学教授は、新聞やテレビなど多くの媒体で「奨学金問題」に関する発言をしている。朝日新聞のデータベースで検索すると、大内教授の発言を紹介した奨学金関係の記事は60件以上もある。
だがその発言には特徴がある。「繰り上げ一括請求」に触れていない。一括請求問題を知らないはずがないから、これは奇妙である。
じつは、筆者も一時は全国会議のメンバーだった。発足直後に加入し、全国会議として最初に取り組んだ仕事が前掲書の出版だった。これを書くための取材を通じて筆者は「一括請求」問題を発見し、同書で告発した。
一括請求はサラ金のグレーゾーン金利に匹敵する大問・・・
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