日本の民主主義運動強化のために(28)
—もの言う責任、告発する責任—

弁護士(大阪) 木村達也

1 はじめに

 令和3年6月24日、ジャーナリスト立花隆さんの死がテレビや新聞で大きく報じられた。彼の最大の業績は1976年の『田中角栄研究』の出版であり、当時の最高権力者であった田中角栄がこの本の出版によって首相の座から引きずり降ろされたことにあった。同じ頃、米国でもジャーナリストによりウォーターゲート事件が告発され、ニクソン大統領が辞任するという米国史上初めての事件が起こり、ジャーナリストの活躍が脚光を浴びた。この当時、彼らジャーナリストによる真実追求や不正告発の勇気ある行動は若い弁護士に大きな勇気を与えた。私達も社会に向かって、もっとものを言い、不正の告発をしなければならないと考えたものであった。

 しかし、気が付くと新聞や雑誌の全盛期は終わり、いつの間にかテレビ全盛の時代に代わっていた。そして、テレビ放送は一個人の行動では行えず、会社組織の一員としてしか動けないので、勇気ある反権力のスクープ報道は困難となっていた。

2 私達のもの言う責任・告発する責任

 私達市民運動や被害者運動の社会正義追求や告発運動は如何に行うべきだろうか。もの言う責任の行使は口で言う程簡単ではな・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。