コロナ禍における消費者教育と「アジア・モデル」の可能性
─法学者の視点から─

京都大学大学院法学研究科准教授 カライスコス アントニオス

1 はじめに

 本稿では、コロナ禍における消費者教育と、消費者教育に関する「アジア・モデル」の可能性について、法学者の視点から概説的な検討を加えたい。まず日本における消費者教育の展開と現状を概観し(「2」)、次にコロナ禍が消費者教育に与える主な影響について考察した上で(「3」、最後に、欧州連合(EU)における消費者教育の在り方と、これとの対比における消費者教育の「アジア・モデル」の可能性に言及する(「4」)。

2 日本における消費者教育

 日本における消費者教育の源流は「家政学」にあり、1960年代から消費者教育論が展開され始めた1。その後、消費者教育に大きな影響を与えたのは、21世紀に入ってからの、消費者政策の「保護」から「自立支援」への転換である。その中で、消費者が自立した主体として能動的に行動するために消費者教育が果たす役割が強調されている2。そして、このような流れの中で、2004年に消費者保護基本法が改正されて消費者基本法となり、同法2条1項に、教育の機会を提供されることが、消費者の権利の一つとして明示された。

 2012年には、消費・・・

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