コロナ禍を契機とした役務提供契約上の債務不履行と任意解除

神戸大学大学院法学研究科教授 田中 洋

1 はじめに

 新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、消費者契約上のトラブルも数多く生じている。そうしたトラブルには、学習塾との契約や結婚式場との契約といった、いわゆる「役務提供契約」におけるトラブルが少なくない。

 そこで、本稿では、コロナ禍における役務提供契約上のトラブル、具体的には、コロナ禍を原因として、①役務提供者(事業者)が役務の提供をしなかった(できなかった)場合や、②役務受領者(消費者)がキャンセルを申し出た場合に関する民法上の取扱いを整理することとする。

 もちろん、上記のようなトラブルがあった場合に、それに対応する規約(約款)等があれば、その規約等に従って解決がされるのが原則である。もっとも、その規約等が消費者契約法上の不当条項規制(消契法8条~10条)の対象となる可能性もある。とりわけ、消費者契約法10条による規制は、任意法規との比較を基準とするものであることからすると、規約等がなかった場合も含めて、いずれにしても、民法の任意法規による場合にどのような解決がされるのかを考えておく必要がある。

 コロナ禍における役務提供契約上のトラブルとして・・・

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