弁護士(東京) 平澤慎一
1 はじめに
現在開催されている法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会(以下「IT化部会」)では「新たな和解に代わる決定」制度の導入の可否も議論されている。
これは和解成立が困難な事案において、裁判所が職権で事件解決に必要な和解条項を定める決定を出す制度である。
現在の実務では、和解成立が困難であるが判決に至らない形での紛争解決を望む当事者の案件等について調停に付したうえで民事調停法17条決定によって解決を図るという運用がなされているが、これを正面から制度として設けるというものである。
しかし、この制度は「新たな訴訟手続」と同様、そもそも民事訴訟のIT化とは関係がないのでIT化部会での議論対象として相応しくない。また内容的にも「理由なし判決」とも称される制度で、導入による弊害が大きいと考えられる。
以下、概要と問題点を指摘する。
2 「新たな和解に代わる決定」案の概要
IT化部会の中間試案に対するパブコメを経て、令和3年7月9日のIT化部会第14回会議で配布された部会資料の検討事項において示された「新たな和解に代わる決定」案(以下「部会案」)の概要は以下のとおりである。
・裁判・・・
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