「新たな訴訟手続」は新設すべきでない
—パブリックコメントの結果を踏まえて—

弁護士(大阪) 松森 彬

1 「新たな訴訟手続」の問題

(1)法制審議会で審議中

 現在、法制審議会の民事訴訟法(IT化関係)部会で、民事裁判のIT化として、オンラインで書類を裁判所に提出することや、裁判所の記録を電子化して保存することなどが検討されています。

 審議事項のなかに、「新たな訴訟手続」の新設の提案が含まれています。この制度は裁判手続のIT化とは何の関係もありません。最高裁は、論点が多いIT化のテーマの中にまぎれこませて、一気に実現してしまおうとしたと考えられます。

 法制審議会は、2021年12月を目処に部会の答申案をまとめ、2022年2月の総会で結論を出します。本稿は8月下旬に執筆していますが、この秋の審議が重要です。

(2)「新たな訴訟手続」とは何か

 最高裁が提案している「新たな訴訟手続」は、証拠を「即時に取り調べることができるもの」だけに制限し、審理期間(第1回期日から審理終結まで)を6か月に制限するものです。当初、「特別な訴訟手続」と呼ばれ、今は、「新たな訴訟手続」の甲案と呼ばれています。

 また、一部弁護士の意見を基に法務省事務局が作成した乙案があります。乙案は、双方の主張や証拠等につ・・・

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