弁護士(埼玉) 上村昌平
2023年12月、桐生市は生活保護行政における三つの不適切事案を公表した。そのうち「事案3」は、職員が保護費受領簿に無断押印をしていたケースである。
1 申請妨害・支給遅延・決定書不交付
「事案3」当事者のXさんは、同居親族によるDVから逃れて桐生市内のアパートに避難していた。そして、2023年8月、生活保護の申請をするため桐生市役所を訪れた。しかし、応対した職員は、旧宅に残してきた家財の移動が終わるまで申請は認められないと説明した。DV被害者が旧宅に家財を残して避難するのは自然なことだから、明らかに誤った説明である。そこで、私がXさんに付き添って桐生市役所を訪れた。紆余曲折を経て、9月26日に申請を行った。保護の決定が出されたのは10月25日であった。
しかし、Xさんに市役所からの連絡はなく保護費の支給は遅延した。Xさんが初回の保護費を受領したのは11月17日である。決定通知書は交付されなかった。
Xさんから報告を受けた私は、本当に決定が出ているのか疑問を抱いた。出ていないのだとしたら、保護費名目で渡された公金の支出根拠が怪しい。そこで、私は、Xさんに、現金を受け取っ・・・
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