上智大学文学部新聞学科教授 奥山俊宏
公益通報者保護法をめぐって間違った言説がSNSで拡散され、誤った議論が横行している。兵庫県の問題を契機として昨年秋以降にみられる現象の一つだ。
たとえば、当事者が「公益通報」と認識・意図してそうしていることが、公益通報者保護法の適用にあたって必要であるかのような言説がある。
元西播磨県民局長が昨年3月に警察、県議会、報道の10の先に告発文書を送った行為について、兵庫県の職員局長は同年4月16日の県議会総務常任委員会で次のように答弁している。
「公益通報の目的ではなく、そういった趣旨ではなく、当該文書を配布したということを本人が言っていた。(中略)当初、公益通報という形では意図していない形で配布した文書、記載内容については、懲戒処分の対象になり得るものと考えている」
どうやら兵庫県は当時、「公益通報」と意図した公益通報でなければ公益通報でないと考えたようだ。しかし、それは誤りだ。公益通報者保護法は、当事者が公益通報と意図していたことを「公益通報」該当の要件とはしていない。
おそらく、兵庫県は、この誤りが一因となって、のちに同県が設けた第三者委員会によって「違法・・・・
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