中国消費者法事情(その39)
─電信ネットワーク詐欺禁止法等について(上)─

弁護士(大阪) 白出博之1

第1 立法の背景

 数年来、中国では電信ネットワーク詐欺行為が多数かつ頻繁に発生しており、人民大衆の利益と社会の調和・安定に対して重大な危害を与えている。そこで刑事法分野では詐欺罪の特則として、情報ネットワーク安全管理義務履行拒絶罪(刑法286条の1)2、インターネット情報不法利用罪(同287条の1)、インターネット犯罪幇助活動罪(同287条の2)が2015年刑法改正で追加されている。

 電信ネットワーク詐欺犯罪は、すでに事件数が最多、損害も最大であり、大衆に最も大きな影響を与える突出した犯罪であるが、多数かつ頻繁な詐欺行為の発生を有効に抑制することは困難であるため、さらに制度を改善し、断固として打撃と管理をすすめ、人民大衆の重要な利益を維持擁護する必要がある。実務状況からみると、電信ネットワーク詐欺禁止活動の総合的管理、根源管理面に関する制度的措置が不十分であり、金融、電気通信、インターネット等業界ガバナンスにはその連携に弱さがあるため、各方面の責任制度をさらに構築・改善し、打撃・管理のための協同協力を形成し、実務上のグッドプラクティスと各政策文書を法律規定にアップ・・・

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