弁護士(京都) 平尾嘉晃
第1 調査に至った経緯
1 消費者契約法は2000年4月の制定後、2006年、2016年、2018年そして2022年5月と改正が重ねられてきた。しかし、改正の度に付帯決議において不足部分の指摘がなされ、とりわけ、超高齢化社会の進展や、デジタル取引社会の進展への対応の不十分さは否めない。
EU諸国では広く認められている作成者不利の準則(個別に交渉されなかった契約条項の意味について疑いがあるときは、当該条項を持ち出した当事者に不利となる解釈が優先されなければならない)1や不公正取引方法に関する包括規定の採用などは、消費者契約法の改正議論のたびに論点となるものの、法制化に至らないままである。
とりわけ、2022年5月改正の際の検討会報告書では、消費者契約法第4条の「意思表示の取消し」のうち、少なくとも困惑類型については包括規定を規定することが提案されたが、内閣法制局の法制化段階で見送りとなった。
2 これに対して、EUでは不公正取引方法指令で、不公正な取引行為を禁止する包括規定、ミニ包括規定として誤認惹起的取引方法(不作為も含む)、攻撃的取引方法の禁止規定が定められ、これら包括規・・・
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