諸外国における売買契約上の契約適合性の規律(1)
─動産売買契約における消費者保護規定を中心に─

弁護士(大阪) 大上修一郎
弁護士(大阪) 薬袋真司
龍谷大学教授 カライスコス アントニオス

1 はじめに

 諸外国では、民法あるいは動産売買法等の単行法において、契約の目的物の品質等について、適合性の認定に関する具体的なルールが定められている例が多い。また、事業者・消費者間の動産売買については、契約適合性の基準を強行法的に定める例も少なからず存在する。

 ところが、現在の日本の法律には、この点を定める規定は、種類物売買において、当事者の合意等で品質を定めることができない場合の給付について定める民法401条1項以外にない1。問題の多くは、一般的な契約解釈や事実認定として扱われることになる。その結果、契約当事者の認識が不明確な場合や事実関係が明確ではない場合に、裁判所の判断が不安定なものになったり、あるいは、買主(特に買主が消費者である場合)の保護として不十分な帰結となったりするのではないかとの不安が拭えない。

 そこで、売買契約における目的物の契約適合性について、動産売買(特に、消費者動産売買)を中心に、諸外国の法制度を紹介し、この問題への立法的関心を高めることが本稿の目的である。

2 イギリス

(1)沿革・・・

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