英国完全子会社が販売した仏製抗ヘモフィリスワクチンはいつ流通におかれたか
─欧州連合司法裁判所の予備判決(2006年2月9日)─

一般社団法人日本消費生活問題研究所 主任研究員 土庫澄子

1 事案

 1992年11月3日、Declan O’Byrne少年が英国の診療所で抗ヘモフィリスワクチンの接種を受けた後、重度の障害を負った。被害者・請求者であるO’Byrne氏は、投与されたワクチンに欠陥があったことが障害の原因であると主張した。

 本件ワクチンの製造者は、フランスの法律に基づいて設立されたPasteur Mérieux Sérums et Vaccins SA(社名変更によりSanofi Pasteur SA; APSA)である。1992年9月18日、 APSAは被害児に投与されたワクチンを含む貨物を、イングランドおよびウェールズ法に基づいて設立されたAventis Pasteur MSD Ltd(現Sanofi Pasteur MSD; APMSD)に送付した。APMSDはAPSAの完全子会社であり、英国におけるAPSA製品の販売代理店を務めていた。APMSDは同9月22日に積荷を受領し、APSAに対して支払いを行った。

 その後、時期は明らかでないが、APMSDは貨物の一部を英国保健省に売却し、APMSDは保健省が指定した病院に貨物を届けた。病院は、・・・

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