弁護士(大阪) 今井孝直
大阪高裁令和6年3月14日判決(最高裁HP)は次の二点において重要な意義を有する。一つは、子どもが首をつってしまう操作コードのある窓カバー製品には、製造物責任法上の欠陥があるとしたこと。これは初めての司法判断である。もう一つは、クーリング・オフの有効性を認める事例に新たなものを追加したことである。
1 窓カバー製品の欠陥
窓カバー製品の操作コードは子どもの命を瞬時に奪う。何かの拍子に首に掛かって宙づりになるとわずか2~3分で子どもは死ぬ。居間の隅で事は静かに発生する。
本件製品のメーカー(YKK AP)のとった安全対策は、コードを束ねるクリップを消費者に提供することであった。消費者がこれを使って子どもの手の届かない位置にコードを留めればよいという考え方である。その是非が論点である。
消費者の行動に依存する安全対策は、消費者が危険性を感じていないと有効に機能しない。しかし消費者は操作コードの危険性を実感しにくい。刃物を危ないと感じるような直感性がない。当の子どもに至っては危険性を全く感じていない。仮に子どもや保護者にヒヤリハットの経験があっても、子どもの成長とともに心配する・・・
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