弁護士(大阪) 増田 尚
1 敷引
敷引とは、保証金(敷金)を明渡時に返還するに当たり、一定額(あるいは一定の割合)を差し引くことをいい、阪神地域の民間賃貸住宅において用いられていました。阪神地域では、保証金が家賃の6~10か月分、敷引がその5~8割にも及び高額であったことから、敷引特約が消費者契約法10条により無効とされるべきであるかどうかが争われていました。
敷引の趣旨については、通常損耗の補修費用、礼金・更新料免除の対価、月額家賃を低額にする補償、損害賠償の予約など、様々な見解がありましたが、最高裁平成23年3月24日第一小法廷判決・民集65巻2号903頁は、「契約当事者間にその趣旨について別異に解すべき合意等のない限り、通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含む」との見解を示しました。
その上で、同最判は、「当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り」、消費者契約法・・・
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