生活保護とメディアの役割

北日本放送報道記者 吉田颯人

貧困問題を自分事として

 地元・富山県の北日本放送に入社して5年。警察・司法担当記者として様々な取材をする中で特に印象に残った裁判が「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」だ。2013年に国が生活保護基準を引き下げたことに対し、生活保護受給者らが処分の取消しや慰謝料を求めている裁判で、富山を含む全国29都道府県で争われている。私がこの裁判に関心を持ったのは「生活保護」という言葉にあまり馴染みがなかったからだ。富山は生活保護の受給率が全国で最も低く、私はどこか他人事と捉えていた。しかしこの裁判で原告の方の悲痛な訴えを聞き、この地にも貧困問題は確実に存在していることを知ると同時に、これまで目を向けて来なかった自分自身を恥じた。そして記者として「多くの人に貧困問題を自分事として考えてもらうきっかけを作りたい」という思いを抱き、数か月間にわたって取材を重ね、ドキュメンタリー番組「半透明のわたし」を制作した。番組は、先述の裁判に自らの法曹人生をかけて闘う富山市の西山貞義弁護士や、困窮学生の大学や短大の進学を認めるよう富山から声を上げる大学生の儚さんの活動と思いに密着したもので、2・・・

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