消費者契約と合理的配慮の提供義務を考える

弁護士(大阪) 川本真聖

1 障害者差別解消の改正

 2021年5月28日、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という)の一部を改正する法律」が成立した。同改正によって、それまでは、努力義務として規定されていた「事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供」(以下「合理的配慮」という)が、法的義務とされた(同法8条2項)1

 本稿では、大阪弁護士会等主催のシンポジウム「障がい者の消費者トラブルを考える〜誰もが安心できる消費生活のために」(2021年4月21日)を契機に、合理的配慮と消費者法制の整備について考える。

2 合理的配慮とは

(1)障害者権利条約

 合理的配慮の概念が広く認識されるようになったのは、2006年12月13日に国連総会において採択された2障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という)による。

 まず、同条約は、障がい者について、「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。」・・・

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