佐賀大学経済学部(経済法学科) 教授 岩本 諭
はじめに─本稿の射程と視点
2020年1月からの国内における新型コロナウイルス感染症のまん延は国民生活のあらゆる面に、かつて経験したことのない影響を及ぼし、2021年以降も状況は大きく変わるところなく続いている。本稿は、消費者および市民生活の視点から、国民生活安定緊急措置法(以下、国民生活安定法と表記する)と新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法と表記する)を中心に法規制の動向および課題と思われる事項を整理するものである1。
1 消費者/国民の活動・生活と関連法制度
(1)国民生活安定法
国民生活安定法は、1973年11月に勃発した第四次中東戦争を契機とする、「石油ショック」といわれる混乱した国内経済政策の一環として制定された関連三法の一つであり2、今般のコロナ禍で47年ぶりに適用された。
同法は、「物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。」(1条)という立法・・・
この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。