紛争鉱物と消費者の役割

一橋大学名誉教授・明治学院大学客員教授 松本恒雄

1 紛争鉱物とデューデリジェンス

 紛争鉱物(conflict minerals)と言われてもピンとこない消費者が大半だろう。これは、内戦等により紛争状態、暴力支配状態にある国や地域で採掘された鉱物のことをいう。

 紛争鉱物の一つとしてのダイヤモンドの問題は、レオナルド・ディカプリオ主演の2006年の映画「ブラッド・ダイヤモンド」(血塗られたダイヤモンド)で広く知られるようになった。

 2010年にアメリカで制定されたドッド・フランク法(ウォール街改革及び消費者保護法)は、金融規制改革の一つとして、コンゴ民主共和国とその周辺国から採掘されるスズ(英語でtin)、タンタル、タングステンと金の4種類の金属(英語の頭文字から3TGと呼ばれる)を紛争鉱物と指定した。そして、SEC(米国証券取引委員会)に報告書を提出している上場企業(外国企業を含む)は、自社の製品に紛争鉱物が使用されている場合、「紛争鉱物報告書」を作成し、第三者機関の監査を受けてSECに提出しなければならず、ウェブサイトへの掲載も義務づけられた。紛争鉱物が使用されていることを知らなかったというだ・・・

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