ポンジー・スキームにおける違法収益の剥奪と被害回復について

弁護士(兵庫) 平田元秀

第1 はじめに

1 本稿は、本誌前号(123号)135頁の大森景一弁護士の論考「違法収益剥奪法制の現状とこれからの課題」、同137頁の中川丈久教授の論考「違法収益吐き出しの法制化」を受け、さらに各論的な課題について、私見を述べるものである。

2 わが国では、ポンジー・スキーム(Ponzi Scheme)という用語で括ることのできる詐欺的商法の類型で、違法収益の剥奪と被害回復の法制度が十分ではない1

 ポンジー・スキームとは、「出資金を運用し、その利益を出資者に還元する」とか「販売した物品を預かって運用し、その利益を販売預託者に還元する」等とうたって、多数の消費者から資金を集めるが、実際には、資金や物品を運用する事業や運用対象となる物品は存在しないか、または、ほとんど存在せず、「利益の還元」等を装いつつ、実際には別の消費者から集めた資金の一部を他の消費者に分配する構造になっているもので、最終的には破綻するべくして破綻するという、犯罪的で、組織的で、詐欺的な、社会から禁圧するべき商法である(以下、本稿では、この定義を前提に論じる)。

 こうして集められた資金は、役員報酬、従業員・・・

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