佐賀新聞吉野ヶ里販売店「押し紙」勝訴判決の報告と今後の展望について

弁護士(福岡) 鍋島典子

1 令和2年5月15日、佐賀地方裁判所は、佐賀新聞が、社として販売店に対して「押し紙」行為を行っていたことを認定し、「押し紙」による損害計1066万円余りを賠償するよう命じる判決を下した。

2 本件の概要は次のとおりである。

 原告は、父親の代から佐賀新聞の新聞販売店を営んでいた男性で、原告は、父親の死後に販売店経営を引き継いでいた母親から、平成21年4月に販売店の経営を引き継ぎ、平成27年12月に廃業するまで販売経営を行っていた。

 原告が平成21年4月に販売店経営を引き継いだ際、すでに当該販売店は、新聞社から送られてくる新聞の約10%が「押し紙」であり、その割合は年々上昇し、一時期は17%にも上った。原告は、運転資金が不足したときには借入れをしても「押し紙」分の代金を支払っていたが、ついに経営を続けることが困難になり廃業に至った。

 そのため、平成28年7月29日、新聞社の「押し紙」行為により廃業に追い込まれたとして、支払ってきた「押し紙」分の代金相当額と廃業による逸失利益等の支払いを求め、佐賀地方裁判所に提訴した。

3 新聞社と販売店の関係についてあまりご存じない方に、新聞社と・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。