「キャッシュレス決済」について
─法改正と課題─

弁護士(東京) 坂 勇一郎

1 キャッシュレス決済を巡る状況

 2020年6月のポイント還元事業1の終了、新型コロナ禍での「巣ごもり消費」によるネット取引の拡大(クレジットが大宗を占める)、9月からの「マイナポイント」等、キャッシュレス決済を巡る環境は、変化の中にある。クレジットの他、この間、前払支払手段や資金移動、さらには収納代行など現行法規制の対象でない決済も広がってきている。

 全体としてキャッシュレス決済が拡大する中、①確実な決済、②利用者の預け入れ資金の確保(前払い、即時払い)、③悪質加盟店等による被害の防止・救済、④第三者による不正利用の防止・救済、⑤過剰与信の防止(後払い)、⑥個人情報保護等、利用者保護はますます重要となってきている。

 ポイント等への訴求とともに、安全・安心への関心もこの間高まっている2。他方、フィッシングによるID・PWの詐取事例を含め不正利用が増加傾向にある3。また、悪質加盟店等による消費者被害も後を絶たない。さらには、スマホによる利用の拡大やターゲティング広告の高度化等により過剰与信や過剰投資も懸念される4。海外では、独の大規模決済業者の破綻により英国の利用者等・・・

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