農薬残留基準緩和のルーツ

食の安全・監視市民委員会代表 弁護士(東京) 神山美智子

1 はじめに

 最近週刊誌などで頻繁に取り上げられているものに、除草剤グリホサート問題がある。本誌119号(220頁)で天笠啓祐氏が、グリホサートの発がん性について書いておられる。また木村.黒田純子氏は、雑誌「科学」2019年10月・11月号にグリホサートの多様な毒性について執筆しておられる。 週刊新潮は8週にわたり、「農薬大国」ニッポンと題して、ネオニコ系農薬やグリホサートの諸問題、及び残留基準大幅緩和問題を取り上げた。 また、化学物質過敏症支援センターのニュースレター「CS支援」 113号には、印鑰智哉氏が、 2017年12月25日に、グリホサートにつき、小麦の残留基準5(ppm)を30へ、ひまわり 0.1を40へ、そば 0.2を30へ(単位は同じ)大幅に緩和したことを問題として書いておられる。 こうした事例の裏側に、アメリカの要求にすべて従う日本政府の姿勢があることが強調されているが、これは昨日今日始まったことではない。

2 農薬残留基準の制定

 食品の安全を守る基本的法律は食品衛生法であるが、法律の条文に「農薬」の文字すらなく、食品衛生法に・・・

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