消えた「利権」、どうなる日本のIRカジノ誘致

静岡大学教授 鳥畑与一

はじめに ラスベガスサンズ撤退の意味

 「日本におけるIR開発の枠組みでは私たちの目標達成は困難である……今後日本以外での成長機会に注力する」(5月13日)というラスベガスサンズのS・アデルソン会長声明は、日本のIRカジノ誘致関係者に衝撃を与えました。新型コロナウイルス感染拡大の影響深刻化にもかかわらず従来の選定計画を変更しない政府等に対する不満が高まっていた中での撤退宣言は、カジノ業界が直面する苦境をまざまざと示したと言えます。それは、カジノの高収益に依存した巨大な統合型リゾート(IRカジノ)による経済効果の大きさでカジノを合法化しようという政策の破綻であり、カジノ推進派が今後どのような戦略の練り直しを行ってくるかが注視されねばなりません。

1 消えたカジノの営業独占による巨額「利権」

 前年同月比97%減のカジノ収益(表1)。これが2月にコロナ感染対策で2週間のカジノ閉鎖で88%減に見舞われたマカオのカジノ営業再開後の4月の現実です。感染対策の入国規制強化でカジノは営業しても客足は途絶えたままなのです。シンガポールも入国規制強化を経て4月以降カジノ閉鎖となっています。感・・・

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