いわき避難者訴訟(1陣)仙台高裁判決
─その前進性と賠償水準の矛盾─

福島原発被害弁護団・幹事長 弁護士(東京) 米倉 勉

 仙台高等裁判所は、2020年3月12日、「福島原発避難者訴訟・1陣」(原審:福島地裁いわき支部)について判決を言い渡した。避難者による集団訴訟としては、初の高裁レベルの判断になる。

 本稿では、判決内容の優れた前進性と、これに相反する不十分な結論という二面性について報告したい。

 この裁判は、2011年3月11日の福島第一原発事故のために、避難指示による強制避難を強いられた福島県相双地域の住民216人が、東京電力を被告として、「故郷の喪失(剥奪)」等に対する賠償を求めて提訴したものである。「復興」の宣伝ばかりが強調される中で、被害の長期化・深刻化という現実を明らかにして、生活再建を可能とするだけの正当な賠償を実現することを目的にしている。

1 東電の「悪質性」の指弾

 判決の第一の特徴は、被告東電の「悪質性」を厳しく指摘したことである。判決は、東電が津波による全電源喪失の可能性を認識していたこと、さらに、市民団体が東電に対して抜本的な津波対策を申し入れていたにもかかわらず、東電が対応を先送りしたことを指摘し、「被害者の立場から率直に見れば、このよう・・・

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