不当な生活保護基準引下・棄却判決
名古屋地裁

弁護士(京都) 岡田康平

 令和2年(2020年)6月25日、名古屋地方裁判所民事第9部(角谷昌毅裁判長)は、平成25年8月から3年間かけてなされた、平均6.5%、最大10%(年間削減額約670億円)の生活保護基準引下処分の取消し等を求めた裁判について、原告の請求をいずれも棄却する判決(以下「本判決」という)を言い渡した。本判決は、全国で提訴されている同種事件での初めての司法判断であった。

 本件における生活保護基準の引下処分は、主に①「デフレ調整」と②「ゆがみ調整」の名の下になされたものであるところ、①「デフレ調整」については、厚生労働大臣が「生活扶助相当CPI」という物価指数により実態と大きく異なる下落率を導き出した物価の計算方法に問題があり、②「ゆがみ調整」については、生活保護基準の専門的評価及び検証を行っている生活保護基準部会が検証した数値を、厚生労働大臣が独断で2分の1にしたという問題がある。両者はいずれも看過し難い重大な問題であるにもかかわらず、本判決はこれらの論点についていずれも精密な検証を行うことなく原告の主張を排斥し、国側の主張を全面的に肯定し、厚生労働大臣の広範な裁量を認め・・・

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