消費者被害の実態と消費者行政の役割
─自主交渉原則論への違和感─

弁護士(京都) 加藤進一郎

1 はじめに

 幸いにして、これまで消費生活行政の現場に携わる人から「消費者の自立の観点から消費生活行政においては自主交渉(それに対する助言)が原則であっせんは例外」といった論調の意見を聞いたことはない。本稿の依頼の趣旨は、上記のような論調の意見があることを前提に消費生活センターでのあっせんの位置づけを論ぜよ、ということのようであるが、私としてはそのような論調が、いったいどういう場面を想定して述べられているものか理解し難い。誤解を怖れずに言えば、そのような論調は、消費者被害の実態に対する無理解から来るのではないかとさえ思う。

2 消費者被害の実態

 弁護士登録してから20年間、ほぼ間断なく、悪質商法被害事件の消費者側代理人として事件を担当してきた。依頼者の属性は千差万別であり、認知症の高齢者、未成年者を含む若年者、無職の年金生活者、資産家、学校の先生、会社の代表者、ときに法人など様々であるが、属性にかかわらず言えることは、対象となった契約の客観的性質と消費者の認識との間に歪みがあるということである。そもそも自身が契約した対象が一体何なのかを理解していない消費者も少なくな・・・

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