イギリスにおける送り付け販売の規制の沿革

京都大学大学院法学研究科准教授 カライスコス アントニオス

1 はじめに

 事業者が、注文を受けていない商品を消費者に送付または配達したうえで代金を請求する「送り付け販売(inertia selling)」については、日本では、特定商取引法によって規制が行われている。より具体的には、同法59条において、「売買契約に基づかないで送付された商品」として、受領者が承諾をせず、事業者が商品の引取りをしない限り、商品の送付があった日から14日間が経過することにより、事業者は返還請求ができなくなると規定されている。消費者が事業者に対して引取請求をした場合には、この期間は引取請求の日から7日間に短縮される。この規定は、特定商取引法(旧訪問販売法)の制定当時から存在するが、1988年の法改正までは、前記期間はそれぞれ3か月および1か月であった(訪問販売法18条)。

 訪問販売法18条の立法の際には、イギリス法が参照されたと指摘されている1。そこで、本稿では、日本における送り付け販売の今後の在り方に関する議論のための比較法的材料として、イギリスにおける送り付け販売(役務も規制対象とする場合には、「送り付け販売等」と・・・

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