国の消費者行政への関与と弁護士の役割
─津谷弁護士に励まされて─

弁護士(京都) 野々山 宏

1 はじめに

 津谷弁護士と私は司法修習生35期の同期である。津谷弁護士は、早くから先物取引全国研究会など消費者問題の全国的な取組みの先頭で活躍し、私にとっては、津谷弁護士は同期とはいってもその背中を見ながら活動を続けさせてもらう存在であった。

 津谷弁護士に大いに励ましてもらったことがある。2010年4月に、私は、従来は官僚経験者の退職後のポストであった独立行政法人国民生活センター(以下「国セン」という)の理事長に民間から初めて就任することになった。2009年9月に消費者庁および消費者委員会が発足し、国の消費者行政が新たな体制となって半年後で、国や地方の消費者行政が変革しようとする混乱もあり、一方で民主党政権による事業仕分けが行われて国センの存在意義が問われていた時期であった。国センの理事長職は、弁護士とは異なり、監督官庁や政治へ直接の対応が求められ、さらに組織運営のマネージメントを行う行政職である。これまで経験したことない職務であり、何より誰も味方がいない中に落下傘で降下する不安な思いがあった。

 そんな思いの中、国セン理事長就任公表のその日に、当時日弁連消費者問題対・・・

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